BUNGAKU@モダン日本_archives(旧・Yahoo!ブログ)

2005年2月18日〜2019年12月15日まで存在したYahoo!ブログのデータを移行しました。

2009-01-01から1年間の記事一覧

蛇足ではありますが―ネタバレ考(3)

問題点の整理 「ネタバレになってしまうので…書きません。」と言ってしまうと,小説や映画の中身に触れることすべてが“ネタバレ=悪”になってしまうわけですが,実際にはさまざまなレベルがあります。 レビューである以上,「核心的な部分」に言及しない限り…

レッテルのひとり歩きとあらすじで読む名著―ネタバレ考(2)

レッテル貼りが悪を作る 善意や正義から始まったことが,いつの間にか世の中を生きにくくさせてしまうことがあります。 課長がOLのお尻を触るのは「セクハラ」ですから,そういう慣行は根絶された方がいいのでしょうけれど,「おっ,髪型変えたんだね。な…

セクハラおやじの絶滅と何やらファッショなネット社会―ネタバレ考(1)

オフィスからヌードカレンダーが消えた日 昭和時代(!)のお話です。 日本全国のオフィスでは,男性サラリーマンのデスクの上にヌードカレンダーが飾られていました。 課長は軽口をたたきながらOLのお尻を触ることを日課にしていましたし,“オールド・ミ…

「博士が愛した数式」と「週末のフール」―愛すべきうっかりミスを求めて(増補改訂)

ブログに記事を投稿した後,しばらくして読み直すと必ずミスが見つかります。 ときにそれは致命的で,いわゆる「ギャ!!っと叫んでろくろ首」状態になり,あわてて修正するのですが,発見するのが遅くなって落ち込むことも少なくありません。 小川洋子の「博…

かなぶんにもらった中島敦の漢字テスト―67回目の命日によせて

かなぶんの奮闘 施設の本質が理解されないまま大阪府立児童文学館の廃館が決まってしまったことは返す返すも残念ですが,一般向けの閲覧や展示よりも研究のための資料保存に重心を置きすぎていたことが市民の理解を妨げ,拙速な政治判断を招き寄せてしまった…

マイケル・ジャクソンのTHIS IS IT―ネタバレなんか怖くない!

2回目の“THIS IS IT” 妻を誘い,マイケル・ジャクソンの映画“THIS IS IT”をふたたび観に行きました。 自宅に帰ってから観たスマスマのマイケル・ジャクソン特集も良かったですし,MJ三昧の1日でした。 それにしても,公開中の映画を2度観るというのは,…

司馬遼太郎記念館へとアーケード商店街を抜ける―大阪紀行(その3)

河内小阪のアーケード商店街 大阪国際児童文学館を訪れてから太陽の塔を眺めながら昼食をとった私は,大阪万博の公式記録映画を2時間以上にわたって鑑賞した後,司馬遼太郎記念館に向かいました。 万博記念公園前駅から電車を乗り継いで,近鉄奈良線「河内…

大阪国際児童文学館の廃館―大阪紀行(その2)

橋下徹の暴挙 幼い頃に恋い焦がれた20世紀少年の聖地・万博記念公園に私が行ったのは,そもそも大阪国際児童文学館を訪れるためでした。 今年3月に「大阪府立国際児童文学館の廃止条例案」が府議会で可決成立し,私が訪れた大阪府立国際児童文学館は,2…

太陽の塔がそそり立つ20世紀少年の聖地―大阪紀行(その1)

20世紀少年の聖地 小学生だった私が狂おしいほどに恋い焦がれていた大阪万博の会場に,39年後の今年,初めて足を踏み入れました。 児童文学者の宮川健郎さんの案内で,廃館が決まった大阪国際児童文学館を訪れるというのが直接の目的でしたが,とにかく…

マン・イン・ザ・ミラーの悲劇―“THIS IS IT”のマイケル・ジャクソン

これがそれだ! マイケル・ジャクソンという稀代のスーパースターを描いたドキュメンタリー映画でありながら,ロンドン公演というスペクタクルのメイキングビデオでもあり,ヒット曲の数々をスクリーン上で楽しめる音楽映画でもあり,さらに言えば,新曲“THI…

マイケル・ジャクソンのTHIS IS IT と シルクドソレイユの ZED

スーパースターのパフォーマンス…THIS IS IT! 6月25日に急死したマイケル・ジャクソンの THIS IS IT を観てきました。 2時間近くスクリーンを見つめ,サラウンドの音響に身をゆだねていたんですが,何度も鳥肌が立ち,何度も涙腺がゆるみ,エンドロールの…

南大門で見た仁王像の思想―23万ヒット御礼!

仁王像の足 もう一昨年のことになりますが,東大寺の南大門で仁王像を見たときのことです。 中学校の修学旅行で初めて見てから,少なくともそれまでに5回は見ていたはずなのですが,はじめて「ん?」と発見したことがありました。 阿形(あぎょう)像「金剛…

テレビドラマ版「点と線」の魅力―松本清張文学の世界(3)

スペシャルドラマ「点と線」 一昨年,テレビ朝日開局50周年記念スペシャルドラマとして2夜連続で放映されたビートたけしの「点と線」(石橋冠監督、竹山洋脚本)は,第1夜・第2夜とも視聴率が23%を超え,文化庁芸術祭大賞などの複数の賞も受賞しまし…

加藤和彦の死―日本語ロック論争とボクシングをする詩人たち(余滴)

江藤淳が自宅浴室で手首を切って自殺したのは,10年前の7月21日,激しい雷雨の夜のことでした。 享年66歳。 講演を聞きに行ったこともある憧れの文芸評論家で,しかも母校湘南高校の大先輩(旧制湘南中学)であるということもあって,訃報を聞いた時は愕然…

フランソワ・トリュフォーの「大人は判ってくれない」を観ました!

間の悪い少年 中学生の頃のことです。 自習時間に勉強していたら,周りがだんだん騒がしくなってきて,10分後に教室は無法地帯と化していました。 おしゃべりをする者,マンガを読み始める者,トランプを始める者,女の子にちょっかいを出す者…。 静かに勉強…

“社会派”推理小説としての『点と線』―松本清張文学の世界(2)

“社会派”推理小説とは? 推理小説の3分類というのがあります。 1)フーダニット(Whodunit=Who done it)→だれがやったのか? 2)ハウダニット(Howdunit=How done it)→どのようにやったのか? 3)ホワイダニット(Whydunit=Why done it)→なぜやっ…

傑作推理小説「点と線」のキズ―松本清張文学の世界(1)

推理小説作家・松本清張の誕生 “社会派推理小説”というジャンルを確立した小説としてあまりにも有名な「点と線」は,JTBの前身にあたる日本交通公社が発行していた雑誌『旅』に発表され,1958(昭和33)年に光文社から出版されました。 鉄道の運行表など…

東宝特撮映画最新作!―映画「20世紀少年」の世界(その3)

ガリガリガリクソンと仲良しになれるか? 8月29日放送のシネマハスラーの中で映画『20世紀少年』を激しく批判した宇多丸が,“主題”に関してこんなことを述べています。 (※レビューですので,当然のことながら多少のネタバレを含みます。念のため) 宇…

ライムスター宇多丸の酷評―映画「20世紀少年」の世界(その2)

オススメです!? 宇多丸の「シネマ・ハスラー」 TBSラジオで毎週土曜日21:30から放送している「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」という番組の中に「シネマ・ハスラー」というコーナーがあります。 ミュージシャンにして映画評論家であ…

高野文子「棒がいっぽん」の世界

http://a248.e.akamai.net/f/248/37952/1h/image.shopping.yahoo.co.jp/i/j/7andy_19575053 クローンのなかに“私”はいるか 先端的な科学技術が驚異的な進歩をとげた201Q年。 私は自分のクローンを誕生させ,開発されたばかりの特殊な成長促進技術を使っ…

カレーライスの歌―映画「20世紀少年」の世界(その1)

映画「20世紀少年―最終章」を観ました! ※注意:ともだちの正体などの核心部分ではありませんが,ビミョーなネタバレが含まれています。 原作マンガ全巻を久しぶりに読み直し,楽しみにしていた「20世紀少年‐最終章‐ぼくらの旗」(堤幸彦監督)を観てき…

萩原朔太郎の「猫」と姜恩喬の「林」

萩原朔太郎の「猫」 何度も読み返していたのにまったく気づかなかったことに,ちょっとしたきっかけで気づき,読み方がガラッと音を立てて変わってしまう経験をすることがあります。 1年半ほど前の萩原朔太郎の「猫」という詩についての記事に書いたのも,…

“夏の終わり”を感じさせてくれる作品

◆“夏の終わり”を感じさせてくれる作品を教えて下さい。 新しい書庫を作りました! 折に触れて投票をしてきましたが,「その他」ばかりになりそうな質問っていうのも意外と多いわけで,この書庫のエントリーとしてアップすることにします。 気軽にコメントし…

トイレで迎えてしまった8月6日―原民喜「夏の花」における〈笑い〉

8月6日,午前8時15分のトイレにて 不規則な勤務が続いていて,今日はオフです。 けさ目が覚めたのは,午前8時過ぎ。 寝ぼけまなこでトイレに入ってまもなく,災害時の緊急放送システムからの声が聞こえてきました。 時刻は午前8時15分。 「…………ご冥…

アマゾンよりもセブンアンドワイ! 漱石は共有文化財産!(転載歓迎)

ネットで本を買うなら 書店で本を買うことがめっきり少なくなりました。 新刊ならアマゾンやYahoo!ショッピングで買いますし,古書は日本の古本屋で探します。 毎月かなりの本に購入していますが,その9割はネット経由で入手しています。 新刊は,最初のう…

東北自動車道の芭蕉の句碑

東北自動車道を使い,会津方面に来ています。 ここまで来る途中,首都高を抜けて最初に休憩する場所としてもう何十回となく利用した蓮田SAで,松尾芭蕉の句碑があることに今日初めて気づきました。 行く春や鳥なき魚の目は泪 芭蕉 東北自動車道は言わば現…

「虫のいろいろ」と「終末のフール」―ヒール・オン・ザ・ヒル?(承前)

ガラス玉のなかの蚤 尾崎一雄の「虫のいろいろ」は,何も食べずにどれだけ生きられるかを見届けようとして2ヶ月近くにわたって便所の2枚の窓ガラスの間に蜘蛛(くも)を閉じ込めたという話や,眉をつり上げてできたシワで額にとまった蝿(はえ)の脚をはさ…

皆既日食の癒し効果―「虫のいろいろ」と「終末のフール」

虫のいろいろ 先月の27日,日本近代文学会で尾崎一雄の「虫のいろいろ」に関する気鋭の研究者の発表を聞きました。 あらかじめ発表題目はわかっていたので自分でも読み直してから会場の清泉女子大学に行ったのですが,あらためて気づかされたのは,「虫のい…

『1Q84』とマイケル・ジャクソン

1Q84年のビリー・ジーン 村上春樹の『1Q84』の売り上げが200万部を超え,冒頭近くに登場するヤナーチェックの「シンフォニエッタ」が注目を集め,CDが売り上げを伸ばしています。 しかし,ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」に続き,2番目…

マイケル・ジャクソン追悼― Man in the Mirror

マイケル・ジャクソンのPV 6月25日にマイケル・ジャクソンが亡くなったので,古いCDの音源をパソコンに落とし,さらには愛用のウォークマンに転送して,何度も聴いています。 それから,Yahoo!動画が懐かしいPV(プロモーション・ビデオ)を公開してく…