BUNGAKU@モダン日本_archives(旧・Yahoo!ブログ)

2005年2月18日〜2019年12月15日まで存在したYahoo!ブログのデータを移行しました。

2006-01-01から1年間の記事一覧

太宰治の「メリイクリスマス」

イブの朝の天声人語 今朝の『朝日新聞』の天声人語に太宰治の短編小説「メリイクリスマス」のことが書いてありました。 「メリイクリスマス」は,太宰治がある母と娘にクリスマスプレゼントとして贈った短編小説だそうです。小説の中に「シヅエ子ちゃん」と…

縄文時代の日本人と荻原浩の『僕たちの戦争』

縄文時代の日本人 「縄文時代の日本人」という文字列をググってみました。ヒット数は約 14,700。ごくありふれた表現です。 でも,縄文時代に「日本人」は存在していません。「日本」という国号が成立したのは,せいぜい7世紀頃のことですから,縄文時代には…

酒と泪と記憶の墓場―バトンのブラックホール8

滝ムシさんのところからのバトンです…。 頂いてから2ヶ月近くも寝かせていたので, そろそろ飲み頃になっているんじゃないかと思い, チャレンジしてみます(笑)。。。 1★好きなお酒はなんですか? 滝ムシさんご愛飲の「鍛高譚」をはじめ,焼酎も好きです…

おかねとアメリカの話―木下順二の「夕鶴」とドラマ「僕たちの戦争」

「夕鶴」が上演され始めた頃のことだと思いますが,つうを演じた山本安英のセリフまわしが稽古の過程で大きく変えられたことがありました。 ・・・というか,そういう話を聞いたことがあります。 誰に聞いた話か覚えていないので,不正確かもしれませんが,…

追悼・木下順二―敗戦後文学としての「夕鶴」

追悼・木下順二 去る10月30日に劇作家の木下順二が肺炎で亡くなりました。享年92歳でした。 木下順二というと,誰もがまず真っ先に思い浮かべるのが「夕鶴」です。 「夕鶴」は,各地に伝わる民話の「鶴の恩返し」をもとにした戯曲で,1949年に木下順二が主宰…

三島由紀夫と靖国神社―そして,ドコモタワーを遙拝する小泉純一郎

憂国忌 今日は憂国忌です。36年前の昭和45年11月25日,三島由紀夫は自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺しました。 三島由紀夫ほどのすぐれた文学者が,なぜあのような最期を遂げたのかはわかりません。ひとつの単純な理由で自殺する人はあまりいないと思いますか…

小田実さんとの,最初で最後?の接近遭遇 in 京都

小田実さん的ダンディズム 昭和文学会の秋季大会で講演をした小田実さんと, 懇親会の席でお話をしました。 会が始まって1時間ぐらいしたころ, 青山学院大学の佐藤泉さんと2人で話しこんでいたので, 一緒にまぜてもらう形でテーブルを囲み, それから30…

村上春樹「海辺のカフカ」のタイポグラフィー

◆タイポグラフィーって何?◆ 「タイポグラフィー」という言葉があります。 私なりに定義すると,「字体そのものの形態に注目して,視覚的効果を計算しながら文字を組み合わせ,表現を行う方法」ということになります。 wiki文法などを使って視覚的な効果を考…

ウルトラマン商店街に行って来ました―円谷プロの街・祖師ヶ谷大蔵

『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(1992年・文芸春秋)の著者である佐藤健志さんは,自分の力で地球を守れない科学特捜隊は自衛隊で,宇宙からやってきておせっかいにも地球を救ってくれるウルトラマンは在日米軍だと言いました。(関連記事→「ゴジラと…

「テルーの唄」と「銀河鉄道999」とフラダンスの著作権

盗作と創作のあいだ テルーの唄と萩原朔太郎 雑誌『諸君!』に寄せられた荒川洋治の宮崎吾朗批判が話題になっています。手嶌葵が歌ったアニメ映画『ゲド戦記』の主題歌「テルーの唄」の歌詞が,萩原朔太郎の「こころ」という詩に酷似しているというのです。 …

岸田秀の「アメリカを精神分析する」―アメリカと文学をめぐる断章(その5)

性格神経症は虐待をやめられない ところで,そもそもアメリカという国はいったいどういう国なのでしょうか。 およそ30年前に書かれた恐るべきアメリカ論をあらためて読み返してみました。 岸田秀の「アメリカを精神分析する」(『現代思想』1977年11月)です…

ゴジラとヤマトとぼくらの在日米軍―アメリカと文学をめぐる断章(その4)

宮崎駿とアメリカ 「アメリカ」という言葉を持ち出して物事を眺め始めると,何から何まで「アメリカ」と結びついて見えてきます。そのうち「すべてはアメリカの陰謀だぁ~!」と叫びたくなってきます。 ですから,“与太話”を展開するにはうってつけの話題で…

「アメリカひじき」と「火垂るの墓」―アメリカと文学をめぐる断章(その3)

「となりのトトロ」と「火垂るの墓」 「となりのトトロ」(宮崎駿監督)が劇場公開されたときに併映されていたのが,野坂昭如原作の「火垂るの墓」(高畑勲監督)でした。1988年のことです。 この2つのジブリ映画を同時に見るというのは、子どもにとっても…

『万延元年のフットボール』とサルダヒコの謎―アメリカと文学をめぐる断章(その2)

サルダヒコの死 大江健三郎の『万延元年のフットボール』の第1章は,「死者にみちびかれて」と名づけられています。「死者」とはおそらく,奇妙な自殺を遂げた「僕」の「友人」のことを指しています。 不思議な感覚に襲われて夜明け前に目覚め,ふらふらと…

『万延元年のフットボール』を読む―アメリカと文学をめぐる断章(その1)

ノーベル文学賞作家として有名な大江健三郎の数多くの小説の中でも,最もすぐれたものだと言う人もいる『万延元年のフットボール』(1967)を,いま久しぶりに読み直してみています。 万延元年とは 万延元年(1860)というのは,勝義邦(勝海舟),中浜万次…

「巨人・大鵬・卵焼き」のバタ臭さ―今日は秋場所初日なんですね。。。

最寄り駅からの帰り道,どういうわけか「巨人・大鵬・卵焼き」というフレーズを思い出し,3つの単語をめぐってしばし妄想の世界に入り込んでしまいました。心身ともに疲れた状態で歩いているときに思いついた与太話にもなりきれない妄想ですが,とりとめも…

“VJ-Day”の靖国神社とYahoo!地図情報の感動

8月15日は“終戦記念日”ではない!? 小泉総理が8月15日に靖国神社を参拝しました。 参拝そのものの是非についても議論が分かれるわけですが,よりによってそれが8月15日であったということも物議をかもしました。 しかし8月15日が“終戦記念日”であるとい…

日本語ロック論争とボクシングをする詩人たち(番外編)

近代詩と唱歌の誕生 漢詩や和歌に親しんできた日本人がヨーロッパ風の近代詩を書き始めたのは,1882(明治15)年に刊行された『新体詩抄』からだと言われています。 収められている詩のほとんどは翻訳詩です。 ほぼ時を同じくして『小学唱歌集』(1881~1884…

横光利一の「蝿」をテーマにした研究会を聴きに行きます。

昨年の2月にブログを開設して,気がつけばなんだかたくさん記事をアップしていました。いちばん多いのは村上春樹がらみの記事ですが,じつは私が卒論で取り組んだのは横光利一(1898-1947)という作家です。 横光利一は,1920年代にデビューした新感覚派の…

木陰で読んだ島崎藤村―ちょっくら旅をしてきました。。。

短い夏休み。上州,信州,会津とドライブしてきました。 視界いっぱいに広がる豊かな水田や,目にも鮮やかな深緑の山々を眺め, 少しばかりリフレッシュ。 写真は会津が生んだ伝説の牛乳“べこの乳”です! うちの近くの「高級スーパー」で買うと, 300円以上…

ねじめ正一のライブ―日本語ロック論争とボクシングをする詩人たち(4)

ねじめ正一の課外授業「ようこそ先輩」 今から8年も前になりますが,1998年10月1日(木)にNHK教育テレビで放映された「課外授業 ようこそ先輩」で講師をつとめたのは,詩人のねじめ正一でした。 母校の杉並第四小学校の教壇に立ち,詩の授業をしたねじ…

現代詩の終焉?―日本語ロック論争とボクシングをする詩人たち(3)

ポスト日本語ロック論争―Jポップの爛熟 1970年代初頭に洋楽に目覚めた私にとって,「日本語ロック論争」は,邦楽はダメじゃんという感覚の根拠になっていました。気恥ずかしくなるような日本語のロックを聴きながら,日本でロックをやるのはきわめて困難だと…

漣健児と桑田佳祐―日本語ロック論争とボクシングをする詩人たち(2)

日本語ロックの原点を作った男?漣健児 日本語を洋楽のリズムに乗せるために何が必要かということを熟知していた人物が,訳詞家の漣健児(さざなみ・けんじ)です。 本名は草野昌一。残念ながら,昨年の6月6日に74歳で亡くなりました。(漣健児オフィシャ…

大滝詠一と内田裕也―日本語ロック論争とボクシングをする詩人たち(1)

日本語ロック論争とは? 日本語の歌詞がファンキーな音楽に乗せて歌われたり,日本語によるラップが次々にヒットしたり,日本語によるロックの可能性が真剣に論じていた時代から考えると,信じられないような状況が目の前にあります。 「日本語ロック論争」…

さくらはさくら?―『海辺のカフカ』のセリフを読む

セリフを読む楽しさ 前に「優香が主演した『デューク』・・・スペシャルドラマ『恋愛小説』の夜」という記事を書きましたが,ああいう小説にとって,作中人物のセリフまわしはとても重要です。助詞の使い方や読点の使い方などにこめられた微妙なニュアンスが…

雨やみを待ちながら―河童忌の随想

雨ばかりでうんざりです。全国で多くの人が雨やみを待っています。今日は7月24日。つまり,芥川龍之介の命日,河童忌です。 ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。 芥川龍之介の「羅生門」の冒頭部分です。平安朝末期の…

優香が主演した「デューク」・・・スペシャルドラマ「恋愛小説」の夜

銀座に、ゆっくりと夜がはじまっていた。 江國香織の「デューク」の結びです。「デューク」は,江國香織をいちやく人気作家にした名編で,短編集『つめたいよるに』に巻頭に収められています。 ショートショートというか,「掌(たなごころ)の小説」という…

金原ひとみの『蛇にピアス』(文庫版・村上龍解説)を読んで

金原ひとみの『蛇にピアス』が文庫本になりました。 『文芸春秋』で読み,そのあと古本屋で単行本を買ってありますから,買う必要がないとも思ったんですが,本屋でパラパラ立ち読みしていたら,村上龍の解説が意外に面白かったので,思わず買ってしまいまし…

カーネル・サンダーズ失踪?―幻想空間・中野区野方のコイケさん

三鷹の玉川上水を訪れた桜桃忌の午後,カーネル・サンダーズに会うためにJR中央線の中野駅で途中下車しました。滞在時間4分!『海辺のカフカ』を偏愛する一読者として,何が何でも中野のカーネル・サンダーズをカメラにおさめたかったのです。 バカですね…

海の向こうで戦争が…大岡昇平の『野火』を読む

テポドンが日本海に落ちました。コンピュータ・ゲームの世界の話ではなく,現実の出来事なのですが,どうも実感が湧きません。危機感がありません。ニュースを見ていても,なんだか他人事のような気がして,いつもと変わらぬ平凡な1日を過ごしています。 き…