2013-01-01から1年間の記事一覧
昨日,12月30日の午後5時半ごろ,大滝詠一が亡くなりました。 享年65歳。 リンゴをかじっているときに倒れ,119番通報で救急搬送する際には既に心肺停止状態だったそうです。 年の瀬の訃報。昭和も20世紀もどんどん遠ざかる感じで,寂しい限りです。 日本語…
ある研究者の論文を専門を同じくする研究者が値踏みして採否を決める「査読」というシステムについて、再検討が必要だという声を耳にすることがある。たとえば「研究者が研究者の論文を評価するということ」(2007年5月『日本近代文学』第76集)で宗像和重は…
70万ヒットに感謝! 今年はこれまでに,転載したものを除き,27本の記事をアップしました。 1月―1本,2月―4本,3月―3本,4月―3本,5月―1本,6月―1本, 7月―2本,8月―2本,9月―3本,10月―3本,11月―1本,12月―3本 (※この記事を含む) …
中3国語教科書の定番,魯迅の「故郷」 ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」や太宰治の「走れメロス」などとともに,魯迅の「故郷」は中学校の定番教材として長く読み継がれてきました。 原稿の中学国語教科書では,最大のシェアを誇る光村図書の『国語3…
流動化する世界と文学 先月の17日(日)に青山学院大学で「電脳コイル」とAKB48と「源氏物語」が遭遇する,まるで異種格闘技戦のようにスリリングなシンポジウムがありました。 「流動化する世界と文学」と題されたシンポジウムの内容は,来年4月に『日本…
負荷が消えました。。。 恐れが消え,気がゆるみ,大丈夫,大丈夫と思っていたら,突然,恐れていたことが現実になりました。 このブログのトップページ下部に「お気に入りブログ」が表示されているのですが,その中になぜか私自身が書いた記事のタイトルが…
私が乗っているバスにTシャツ姿の若者が乗り込んできた。 ドアが閉まると,なぜかすぐにステップに逆戻り。 最後部の座席に座っていた私から見ていても,明らかに挙動がおかしい。 「なかに入って下さい」とうながす運転手を無視するようにでんでん虫の唄を…
作家の村上龍が編集長を務めるメールマガジンJMM(ジャパン・メール・メディア)において,MRIC by 医療ガバナンス学会から転載された記事が配信されることがあります。 先週も,朝日新聞の医療サイト「アピタル」から転載された「内部被曝通信 福島・浜通りから~小中…
小説と商品名 近代文学史上の名作と言われるような小説には,基本的に商品名は登場しません。 流行よりも不易を尊び,時代や国を超えた普遍性を求める芸術において,商品名のようなものは不純物であるからです。 そういうものを不用意に入れてしまった小説は…
NAVERまとめの「【これはすごい】福井県立図書館の「覚え違いタイトル集」が秀逸すぎる」という投稿が評判になりました。 以前から話題になっている福井県立図書館の「覚え違いタイトル集」のエッセンスを画像入りでまとめたもので,「こんな間違ってても本…
相馬高校の土曜講座 私が福島県立相馬高等学校を訪れたのは,東京大学医科学研究所,立命館大学教育研究研修センター,学習評価研究所,世界こども財団の支援を受けた授業奉仕のためでした。 「土曜講座」と名づけられたプログラムで,5月に開成中学・高校…
福島県浪江町請戸 地元の方の案内で,福島県浪江町の請戸地区を訪れることができました。 浪江町というのは,福島第一原発のある双葉町の隣町で,大半が20キロメートル圏内にあります。 そして請戸地区というのは,福島第一原発から10キロメートル圏内にあり…
観てから書くと長くなりそうなので,観る前にレビューの“予定稿”を書いておきます。 そもそも観ていないのでネタバレはありません。ご安心下さい。 堀辰雄と村上春樹 竹内清己さんの『村上春樹・横光利一・中野重治と堀辰雄―現代日本文学生成の水脈』(2009…
村上春樹がつい「先生」と呼んでしまう人 『考える人』2013年夏号(新潮社)に掲載された村上春樹の特別寄稿「魂のいちばん深いところ―河合隼雄先生の思い出」を読みました。 河合隼雄物語賞・学芸賞創設記念の「公開インタビュー in 京都―魂を観る、魂を書…
『日本文学』電子化・公開事業 1946年に設立された日本文学協会の機関誌『日本文学』(月刊)の電子化&公開事業がスタートしました。 電子化と公開の前提として著作権者の許諾を得ることが必要で,そのために現在会員ではない執筆者のリストを作る必要があ…
元テレビっ子,NHKオンデマンドを契約 ウルトラマン・シリーズと仮面ライダー・シリーズを比較しながら現代日本の思想空間の変容を論じた『リトル・ピープルの時代』(2011)の著者で,AKB48の熱烈なファンとしても知られるイケメン(!?)批評家とは誰で…
競争ではなく協働 内田樹さんが『街場の教育論』(2008年)の中でキャリア教育について持論を展開し,「就職活動で、学生たちはそれまで自分たちが『競争』の過程で教わってきたこととはぜんぜん違う基準で選別されるという経験をします」と述べています。 …
ネタバレあります。ご注意下さい! 多崎つくるの父の世代 フィンランドに行く数日前に,多崎つくるは,青山のガラス張りのカフェから通りを歩く沙羅を目撃します。 「がっしりした体格の中背の男」が一緒でした。 その男は「濃い色合いのジャケットを着て、…
注意:ネタバレあります! 沙羅双樹の花の色 多崎つくるを取り巻く作中人物にアオとアカとシロとクロという4つの色を配すること自体は,あまりにも見え見えな設定です。 前回の記事(4/14)にも書いた通り,4つの色は,アオ=青龍―東―春,アカ=朱雀―南―夏…
なんだかガラパゴスな多崎つくるの世界 8年ほど前,綿矢りさの『蹴りたい背中』を読んだ時,ハツが待ち合わせに遅れる場面で,にな川も絹代もいらいらしながら待つだけで,高校生のくせに携帯電話で連絡をしようとしないことに違和感を覚えました。(「『蹴…
長崎稲佐山なう! 運転手さんに福山雅治さんの実家の前を通ってもらい,地元ネタの話をあれこれ聞きながら,稲佐山の山頂にある展望台の屋上にやってきました。 日本三大夜景の一つであり,「1000万ドルの夜景」と称される通りの絶景です。 少し肌寒さが残る…
玉音と足駄の音 横光利一の『夜の靴』(1947年)を読み直しました。 疎開日記の形式で書かれた小説です。 未読の方のために,昭和20年8月15日が東北の農村にどのように到来したのかを印象的に描いた名文として,多くの人に引用されてきた冒頭部を紹介してお…
ウサギを殺す残酷な実験 ※残酷なお話なので,苦手な方はただちに別のページに移動して下さい。 日本で発売されているシャンプーは,ウサギの目で実験されてきました。 まばたきができないように瞼をクリップで固定されたウサギの目に,シャンプーの濃縮液を…
震災をめぐる罪障感とうしろめたさ 「生き残りの罪障感」(サバイバーズ・ギルト)という言葉を知ったのは,野田正彰さんの『戦争と罪責』(1998.8)を読んだ時でした。 ページをめくってこの言葉が目に飛びこんできた時に,すぐに腑に落ちたのにはそれなり…
ブログも2度死ぬ 人間は2度死ぬと言います。 1度目は通常の意味あいにおける死です。 意識は消滅し,肉体も滅びます。 ただし,肉体が滅びた後も,その人間は遺された者の心の内に生き続けています。 しかし,いずれ思い出してくれる者が誰もいなくなって…
誕生日と8周年 今日は私の誕生日です。 そして明日は,このブログ開設8周年の記念日です。 齢を重ねるうちに,「別に誕生日なんてメデタクない」と感じているところもあるのですが,冷静に考えればやはり,無事に1年を生き抜いてきたということ,無事にブ…
ストックホルム症候群 村上龍の『半島を出よ』は,北朝鮮特殊工作部員による奇襲攻撃によって九州福岡が占領されるという近未来小説です。 「近未来小説」である以上はフィクションであるわけですが,荒唐無稽な娯楽小説として単純に笑い飛ばすことのできな…
理論と授業 昨年の8月に発行された『日本文学』の特集と同じ「〈第三項〉と〈語り〉―ポスト・ポストモダンと文学教育の課題」というテーマで開かれた日本文学協会第67会大会第1日目のシンポジウムでは,国語教育部会の活動の土俵自体にラジカルな批判を加…
絶対に笑ってはいけない熱血教師24時が絶望的に愚劣であった件 愚劣で耐えがたいものであったとしても,それが現実である以上,耐えがたい現実が存在しているという状況に耐えなくてはならない場合があります。 自分にとって愚劣で耐えがたいものに見える現…