BUNGAKU@モダン日本_archives(旧・Yahoo!ブログ)

2005年2月18日〜2019年12月15日まで存在したYahoo!ブログのデータを移行しました。

2012-01-01から1年間の記事一覧

書物の宇宙―シンポジウム体験記(2)

「説草」の宇宙 「書物とリテラシー」というシンポジウムで小峯和明さんがした話は,「説草」と呼ばれる書物を取り上げたものでした。 「説草」(せっそう)とは,仏法を説くためや供養を行うために僧侶や信徒が集まる「法会」(ほうえ)のために作成された…

松浦寿輝さんとトイレで―シンポジウム体験記(1)

文学と教育をめぐるシンポジウム 12月1日(土),2日(日)の両日,日本文学協会の第67回大会に参加しました。 1日目には文芸評論家の加藤典洋さんが,2日目には作家で詩人の松浦寿輝さんがパネリストに加わり,両日とも興味深いシンポジウムでした。 【国…

うわさの文学者クイズ―ジャングル次郎のお兄さんの巻

うわさの文学者クイズ! ある文学者に関する“うわさ”を,Yahoo!ブログから拾い集めてみました。 引用されたものが,いったい誰に関する“うわさ”なのか,あててみて下さい。 ヒントになるコメント,ナイスボケ・コメント,新たな“うわさ”コメントも大歓迎です…

脱原発という大義と朝日新聞の訂正記事

脱原発という大義 脱原発をめぐって発せられた言葉のなかに,私の心のひだにザラザラとした不快な痕跡を残すものが少なからずありました。 「デタラメ言うな!」「嘘つき!」「恥知らず!」「人殺し!」・・・ テレビの討論番組やウェブで中継されている集会…

ダンシング・クイーンとゼロ・シナリオの落とし穴

ダンシング・クイーンの落とし穴 先日ラジオを聴いていたら,メリル・ストリープが主演した映画「マンマ・ミーア!」のサントラ盤「ダンシング・クィーン」が流れてきました。 オリジナルは1976年にアバが歌って大ヒット! 中学生だった私は,習ったばかりの…

内田樹邸でのワンドリンク付イベント—真夏の寺子屋in凱風館

真夏の寺子屋in凱風館 この夏,内田樹さんのご自宅で開催された「真夏の寺子屋in凱風館」というイベントに参加しました。 『嘘みたいな本当の話 みどり』刊行記念のイベントで,拙文が掲載されたために招待状が届いたのです。 その折りに参加者に義務づけら…

8月15日の記―柳田国男「清光館哀史」再読

1920年(大正9)8月15日,柳田国男が訪れたのは,三陸海岸の小さな漁村にある清光館という宿屋でした。 あんまりくたびれた、もう泊まろうではないかと、小子内の漁村にただ一軒ある宿屋の、清光館と称しながら、西の丘に面してわずかに四枚の障子を立てた二…

牛丼といちご大福

グローバルな牛丼 3週間前の昼食。 久しぶりに牛丼を食べた。 場所は多摩センターの吉野家である。 ホール担当は,チャンさん,マリリンさん,村山さん。 キッチン担当の2人は,名札が見えないのではっきりしないのだが,おそらくどちらも外国から来た人だ…

ロンドン・オリンピックの「ヘイ!柔道」の話

ロンドン・オリンピックの「ヘイ!柔道」 車を運転しながらラジオを聴いていたら,“オリンピック観戦の専門家”と称するフモフモ編集長という人がゲストとして出演していました。 「スポーツ見るもの語る者」というブログを運営している,知る人ぞ知るスポー…

脱原発へのパブリックコメントを書いてみる―震災記(16)

真夜中のパブリックコメント 7月18日の夜,内閣府国家戦略室の「エネルギー・環境に関する選択肢」(2012/6/29決定)を読みました。 読んだらやっぱり自分も書いてみようという気持ちになったので,すでに日付は変わっていましたが,以下のような意見をパ…

『街場の文体論』と脱原発へのパブリックコメント―震災記(15)

『街場の文体論』を読んで 内田樹さんの最終講義をまとめた話題の書『街場の文体論』を読みました。 神戸女学院大学を退職したのは,2011年3月のことですから,講義自体は震災前に語られたものです。 にもかかわらず震災後に書いたのではないかと思えるよう…

官邸前デモに参加して―震災記(14)

官邸前デモで見たこと 2週間ほど前の6月29日(金)に,「紫陽花(あじさい)革命」とも称される官邸前原発再稼働反対デモに行ってきました。 いつもの通りに金曜の夜を楽しもうとする仕事帰りの人びとでにぎわう有楽町駅で京浜東北線を降り,地下鉄に乗…

漱石のこころの襖(付け足し)

よそよそしい関係 夏目漱石の「こころ」は青年の手記によって構成されています。「上 先生と私」における「私」が,手記の書き手である青年です。 青年の手記は,こんなふうに書き出されています。 私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先…

漱石のこころの襖

奥さん‐襖‐奥の間 夏目漱石の「こころ」を高校生用の教科書で久しぶりに読み直しました。 「下編 先生と遺書」の三十六から四十八にあたる部分です。 今回は「襖」に注目して読んでみました。 それで,「襖」という文字列を肉眼でスキャンしながらページをめ…

50万ヒット記念の近況報告

キタ━━。゚+.(・c_,・´。)。゚+.━━!! 2005年2月に開設したこのブログ,ちんたらと更新を続けているうちにまもなく7年4ヶ月が経過するわけですが,おそらく本日,50万ヒットを達成します! 日本の都市で言うと,宇都宮市、岡山市、鹿児島市、川口市、北九州市、熊…

AKB48の総選挙の生中継と、トータル・ライフ・アドバイザー安藤美冬さん「徹子の部屋」出演のあいまいな記憶

…とは言え、前田敦子と大島優子の区別ぐらいはできるわけでして、 こんな夢をみた。 安藤美姫と安藤美冬がセレブな双子のトータル・ライフ・アドバイザーとして徹子の部屋に出演している。 後で考えてみると、たしかに2人のあの顔立ちはよく似ている。 さか…

iPadのなかの金環日食

保育園のクリスマス会 20年ほど前のことです。 保育園でクリスマス会が開かれ,1歳半になった長男が歌やリトミックを披露してくれました。 初めての子どもでしたから,妊娠がわかってまもなくビデオカメラを購入。 その日も自慢のビデオカメラで,大勢のパ…

絲山秋子の「ベル・エポック」(8)―「小さな恋のメロディ」が流れていた理由

※いきなりここへ来てしまった方は,できればこのシリーズ最初の記事へどうぞ! 行くあてはないけど… そろそろ終わってもいい感じのこのシリーズですが,せっかくなので触れておきたいのは,BLANKEY JET CITYの「小さな恋のメロディ」についてです。 7枚目の…

JR宮古駅前の鯉のぼりを思う

去年のゴールデンウィークは震災による社会的な混乱がまったく収まっておらず,被災地にボランティアとして出かける人もたくさんいましたし,計画停電も実施中で,社会全体に自粛ムードがただよい,レジャーどころではありませんでした。 私自身もどこで何を…

絲山秋子の「ベル・エポック」(7)―“勝ち組”になりそこねた女?

ネタバレ注意です! (※いきなりここへ来てしまった方は,できればこのシリーズ最初の記事へ。) 勝ち組になりそこねた? このシリーズを始めてすぐに,ちょっと虚を突かれる感じのコメントに遭遇しました。 誠さんの死による互いの立ち場の逆転、関係の変化…

絲山秋子の「ベル・エポック」(6)―婚約指輪とカレンダー

ネタバレ注意です! (※いきなりここへ来てしまった方は,できればこのシリーズ最初の記事へ。) さて今回は,少しばかり深読み・妄想読みへと脱線していきます。 与太話としてお楽しみ下さい。 右手薬指の婚約指輪 冒頭,「私」は東武野田線の七里駅に降り…

絲山秋子の「ベル・エポック」(5)―“虚構”を読むということ

ネタバレ注意です! (※いきなりここへ来てしまった方は,できればこのシリーズ最初の記事へ。) 「なるほど!」コメントに感謝 皆さんのコメントのおかげで,このシリーズも私の意図をはるかに越えた場所にたどり着いています。 自分の中で十分に消化しきれ…

絲山秋子の「ベル・エポック」(4)―女の友情はハムより薄いか?

(承前) ネタバレ注意です! (※いきなりここへ来てしまった方は,できればこのシリーズ最初の記事へ。) 「女同士の友情」の本音? 「友だち以上,親友未満。」という記事を書きましたが,「Twitterで暴露されている女性の本音」というところでこんなつぶ…

絲山秋子の「ベル・エポック」(3)―トイレットペーパー問題

(承前) ネタバレ注意です! (※いきなりここへ来てしまった方は,よろしければこのシリーズ最初の記事へ。) どんでん返しの結末? 「ベル・エポック」を最初に読んだときにたいがいの読者が驚かされるのは,結末近くの次の場面です。 まだガムテープで封…

絲山秋子の「ベル・エポック」(2)―友だち以上,親友未満。

(承前) ネタバレ注意です! 絲山秋子の「ベル・エポック」(短編集『ニート』所収)について,引き続きぐだぐだと考えてみます。 友だち以上,親友未満。 初代トヨタ・サイノスのコマーシャル(1991年)に使われていた秀逸なキャッチ・コピーに「友だち以上…

絲山秋子の「ベル・エポック」(1)―独特の距離感

ネタバレ注意です! 絲山秋子の「ベル・エポック」(短編集『ニート』所収)は,まさに「一読三嘆」なのですが,再読するとさらに「ん?」とか「ええっ!?」とか「ほぉ~」とかということになるコスト・パフォーマンスの高い短編小説です。 すでに10回ほど…

絲山秋子の「ベル・エポック」(序)―ネタバレなしでとりあえず…

短編小説の愉楽 名作の条件とは何かと考えたときに,少なくともその一つは,何度も何度も読み直すことができる“強度”を持っていることです。 より多くの人を倦むことなく読み直すことに促し,そのつど愉楽を与える文学。 何度読んでも深く豊かな感興を与える…

心のケアと脱原発―震災記(13)

震災とことば 計画停電が実施されていた昨年の5月に,「震災記(9)」にこんなことを書きました。 大型連休を利用して初めて夜の渋谷にやって来た東京近郊の男子高生3人組による会話です。 男子高生A「てか,やばくね?これ」 男子高生B「ほんと,やっ…

山田詠美と山田双葉―1980年代文学論ノート(その5)

五、インヴィジブルマンとしての山田詠美 山田双葉としての歩みに終止符を打つことになったのは、「ギャルコミ」と呼ばれて親しまれた主婦の友社発行の少女漫画雑誌『ギャルズコミック』に六回にわたって連載された「ヨコスカフリーキー」(一九八二年三月~…

山田詠美と山田双葉―1980年代文学論ノート(4)

四、「ベッドタイムアイズ」の世界 文藝賞受賞時に「すべての文章が完全に機能している」とまで絶賛された「ベッドタイムアイズ」だが、子細に読んでいくと芥川賞の選評で指摘されたような表現上の瑕疵を見出すことができる。たとえば、スプーンと初めて出会…