BUNGAKU@モダン日本_archives(旧・Yahoo!ブログ)

2005年2月18日〜2019年12月15日まで存在したYahoo!ブログのデータを移行しました。

ロンドン・オリンピックの「ヘイ!柔道」の話

ロンドン・オリンピックの「ヘイ!柔道」

 車を運転しながらラジオを聴いていたら,“オリンピック観戦の専門家”と称するフモフモ編集長という人がゲストとして出演していました。

 「スポーツ見るもの語る者」というブログを運営している,知る人ぞ知るスポーツ・コラムニストです。

 フモフモさんはホスト役の別所哲也さんと挨拶を交わすと,さっそくロンドン五輪について語り始めました。

 そして,数日前に終わった開会式について,こんなやりとりがありました。
 フモフモ「Mr.ビーンが登場した演出がすごく面白かったです」
 別所「そうですね」
 フモフモ「それから最後にポール・マッカートニーさんが“ジュウドウ”の歌を歌ってましたねぇ」
 別所「!?」
 フモフモ「ニッポンがんばれ!って感じで,うれしかったですね~」
 えっ?これって,ボケなのでしょうか?ガチなのでしょうか?

 ビートルズのことを知らないかのようなポール・マッカートニーさん」という言い方が,いかにもガチで間違えたっぽい雰囲気をかもし出しています。

 別所さんもリアクションできないようで,スタジオ内には明らかにビミョー空気が…。

 ラジオ出演で緊張していることが伝わってくるフモフモさんの話しぶりと,戸惑いまくっている別所さんのリアクションから,私は「ガチで間違えてる…」と感じました。

 しかも別所さんはそのあと「ヘイ!柔道」発言をそのままスルーしてしまいました。

 《別所さんがツッコまなかったということは,やはりガチで間違えたのか…。》

 ビミョーな空気を打ち消すためか,別所さんは「Mr.ビーン,まさかの『炎のランナー』でしたね」と話題を変えてしまいました。

 すると今度は,Mr. ビーンの演出が面白かったと言っていたフモフモ編集長が「炎のランナー」の話題をスルーしています。

 こうなってくると,Mr.ビーンことローワン・アトキンソンが登場した場面を賞めたフモフモさんは,じつは「炎のランナー」のパロディーだということを知らなかったのだという可能性が出て来ます。

 《いやいや,まさか…まさかねぇ。。。》

 「ヘイ!柔道」発言はたぶんフモフモさんのあいさつ代わりのボケで,別所さんがツッコまずにスルーしちゃっただけの話だとは思いますけど…。

 ちなみに,フモフモさんのコラム,下品というか何というか,エロチックな際物ネタも多いのですが,ていねいに書かれていて,けっこう面白いです^^;

フジロックニール・ヤングコステロの物まね?

 これまた車を運転しながらラジオを聞いていたら,開催されたばかりのFUJI ROCK FESTIVALのライヴ音源が流されていました。

 どれもこれも,貴重な音源ばかりです。

 やがて流れてきたのは,エルビス・コステロAlisonです。

 美しいバラードで,大好きな曲です。懐かしい…。

 ところがそこに,ドキュメンタリータッチのナレーションがかぶさってきました。

 内容は,同じくフジロックに出演したニール・ヤングの半生です。

 CSN&Yのメンバーとして伝説のロックフェス,ウッドストックに参加した話を,フジロックがらみで語っていました。

 《ん?ということは,この音源はニール・ヤングの歌声?》

 …でもこれはやっぱり,明らかにエルビス・コステロの声です。

 エルビス・コステロも今年のフジロックに出演しています。

 ではまさか,ニール・ヤングフジロックエルビス・コステロの物まねをしたとか!?

 いやいやそもそもニール・ヤングの半生を語るナレーションに,コステロの物まね音源をかぶせるなんて演出,ありえません。

 どう聴いても,明らかに本人の歌声です。

 ライヴ音源なのでアーティスト名や曲名などのデータが入っていないのでしょうけれど,こういう間違いにスタッフが誰も気づかないというのは…。

 ナレーションをしていたのが,ついさっきまでフジロックのアーティストたちの魅力を饒舌に語っていたパーソナリティーだっただけに,ラジオを聞きながら唖然としてしまいました。

 そういえば1ヵ月ほど前にも同じラジオ局の番組で,若い女性のアシスタントを前にした年配のパーソナリティー「昔新宿にツバキというディスコがあって,しょっちゅうスカをかけていたんだよ」とかセックス・ピストルズリードボーカルのシドが,ツンツンヘアの元祖なんだよ」などということをドヤ顔(たぶん)でしゃべっていました。

 「若い頃はツバキのロンドン・ナイトによく行ったよな~」というような用法ならあり得ますが,相手が知らないことを前提に「…というディスコ」として説明するのであれば,略称ではなくて「ツバキハウスというディスコ…」という風に言い表すべきです。

 なんだか知ったかぶりっぽいなと感じました。

 しかも,セックス・ピストルズリードボーカルのシドが…」という話になると,ほとんどデタラメです。

 シド・ヴィシャスがボーカルをつとめてリリースした「マイ・ウェイ」や「サムシング・エルス」をセックス・ピストルズの曲と勘違いしたのかもしれませんが,「リード・ボーカル=シド・ヴィシャス」発言の後に流した曲がアナーキー・イン・ザ・UK」では,弁解の余地がありません。

 そういえば,ロンドンオリンピックの開会式で流れたブリティッシュ・ロックの名曲の数々にはテンション上がりっぱなしでしたが,セックス・ピストルズの曲は「Anarchy In the U.K.」でも「God Save the Queenでもなくて「Pretty Vacant」でしたね。

 ちょっと笑っちゃいましたけど,まあ,そりゃそうですよね( ̄ー ̄)。

訂正:リアルタイムで見てなかったので知らなくて,あとから録画映像を見てわかったんですが,開会式の冒頭でSex Pistolsの「God Save the Queen」がワン・フレーズだけ使われていました。

パラレル・ワールドに生きる

 最近の大学生が戦後文学の存在しない世界を生きていることに気づいた高橋源一郎さんは,私たちの生きている世界はすでに「パラレル・ワールド」なのだと言っていました。

 たしかに,氷川きよしの「櫻」を水森かおりの「ひとり長良川」が抜いたという演歌チャートの世界と,今年の上半期の売り上げ第1位は佐島勤「魔法科高校の劣等生」であるというラノベの世界は,それぞれまるでパラレル・ワールドで,両方の世界を往還できる人は,たぶんほとんどいません。(「AKB48と氷川きよし」

 最近のFMラジオがオヤジの私にとっては信じられない間違いを連発したのも,互いに共有できる文化的基盤や“教養”が成立しなくなり,みんながバラバラなパラレル・ワールドを生き始めているからなのかもしれません。