BUNGAKU@モダン日本_archives(旧・Yahoo!ブログ)

2005年2月18日〜2019年12月15日まで存在したYahoo!ブログのデータを移行しました。

2005-01-01から1年間の記事一覧

「こころ」の先生はなぜ西枕で寝たのか?

私が進もうかよそうかと考えて、ともかくも翌日まで待とうと決心したのは土曜の晩でした。ところがその晩に、Kは自殺して死んでしまったのです。私は今でもその光景を思い出すとぞっとします。いつも東枕で寝る私が、その晩に限って、偶然西枕に床を敷いた…

『「学校の怪談」はささやく』(一柳廣孝編著)青弓社・2005年9月刊

いまや「学校の怪談」は、ひとつのジャンルである。 怪著『〈こっくりさん〉と〈千里眼〉』(講談社・1994.8)で,まさに怪しくデビューした一柳廣孝さん編著で刊行された『「学校の怪談」はささやく』(青弓社・2005.9/装幀・村山守)。その巻頭第一声です…

『海辺のカフカ』の「大公トリオ」とエディプスの三角形

9連覇時代のジャイアンツファンなら,「3番ファースト王」と言われれば,その後に続く「4番サード長嶋」というフレーズを思い浮かべるでしょう。 「冬のソナタ」に心揺さぶられた人なら,チェ・ジウと聞けば,ペ・ヨンジュンを連想するのではないでしょう…

放浪のプリンス「田村カフカ」

村上春樹編集長による『少年カフカ』(新潮社・2003)に収められたファンからのメール(Mail no.676「『海辺のカフカ』と6つの偶然」)に,次のような記述があります。 鎌倉駅前のミスタードーナツで『海辺のカフカ』を読んでいると,店内にはクイーンの『…

二階扉を見つけてください!

世のため人のために特に役に立つ機能を持つわけでもなく,世界の成り立ちや人生についての深遠な意味を告げ知らせてくれるわけでもなく,いずれは消えてなくなるに違いないという現世のはかなさを孕みながら,偶然に出現することなどあり得ないような絶妙の…

カフカ少年はなぜプリンスを聴くのか?

田村カフカは家出をする準備として、図書館のCDライブラリから録音したクリームやデューク・エリントンなどの音楽が入った10枚のMDをリュックに入れます。15歳の少年がソニーのMDウォークマンで聴く音楽としてはとても奇妙な取り合わせですが,10枚のM…

反省の弁

不用意な発言に満ちた私の記事に関して、たくさんのご批判を頂きました。多くの方々からのご批判を真摯に受け止め、取り急ぎ反省の弁をつづりたいと思います。かなり叩かれたので精神的にはきついのですが、自業自得ですし、とにかく思いつくままに反省点を…

カラスを探せ!―『海辺のカフカ』のアナグラム的探検

田村カフカを乗せて森へと向かう大島さんのロードスターを追い越していった「黒いトヨタ・スープラ」の中に「KARASU」が隠れているという与太話の続編です。 「黒いトヨタ・スープラ」の中にひそむカラスを見つけるには,アナグラム的発想が必要です。…

『海辺のカフカ』の「黒いトヨタスープラ」

「変身」を書いたフランツ・カフカのペンネームである「カフカ」は,チェコ語で「カラス」という意味です。ですから,村上春樹の『海辺のカフカ』とは「海辺のカラス」ということであり,登場人物の少年が自ら名乗る「田村カフカ」という名前は「田村カラス…

「舞姫」とハードゲイ

赤く白く面(おもて)を塗りて、赫然(かくぜん)たる色の衣を纏(まと)い、珈琲店(カッフェエ)に坐して客をひく女を見ては、往きてこれに就かん勇気なく、高き帽を戴き、眼鏡に鼻を挾ませて、普魯西(プロシャ)にては貴族めきたる鼻音にて物言う「レエ…

『東京奇譚集』を読む(その3)―どこであれそれが見つかりそうな場所で

「どこであれそれが見つかりそうな場所で」は,悪い小説ではないのだけれど,あまり目立つ小説ではありません。ミスター・ドーナッツのオールド・ファッションみたいに。 目立たないけれど,『東京奇譚集』の真ん中にあって短編集全体のバランスを保つのに役…

吉村萬壱『バースト・ゾーン』―21世紀のエロ・グロ・ナンセンス

ひと皮むけば,皆ガイコツ・・・・ ・・・・美少女へのかなわぬ思いに涙をのんだ友人がつぶやいた名言です。 木村拓哉だろうと黒木瞳だろうと,「ひと皮むけば,皆ガイコツ」であるわけで,顔立ちの美しさというのは要するに,皮膚という被膜の形状の美しさ…

お気に入りの絵本たち―奪い返したバトンで記事を書く。

本バトンを絵本バトンに取り替えて,Tommyさんに渡したんですが,『半島を出よ』や『バースト・ゾーン』を読んでちょっぴりささくれ立った心をいやすべく,勝手にバトンを奪い返して絵本の記事をアップします。 ★ 持っている絵本の数は? 私のものではないで…

小確幸@軽井沢―ちょっぴり体験?「路上観察学」

“小確幸”とは,「小さいけれど,確かな幸せ」のことです。 先日,お祝いごとがあって,軽井沢に行きました。そこで出会った3つの“小確幸”的物件を紹介します。 まずは,『海辺のカフカ』でもおなじみの,カーネル・サンダースさんです。 ケンタッキーフライ…

本バトンを頂戴しました☆彡

!(^^)! かえでさんから“本バトン”が来ましたぁ~ !(^^)! ◇持っている本の数は? 数えたことがないし,ちょっと見当がつきません。 いま住んでいる家には少し広めのクローゼットがあるんですが,改造されて書庫になっていて,そこにある本だけでも,かなりの…

村上龍の『半島を出よ』と日米未来戦記

大塚英志が語る9・11 2001年9月11日(火)午後10時03分,テレビの中で世界貿易センタービルのサウス・タワーに2機目の飛行機が突っ込みました。機影が画面をよぎったかと思った瞬間,サウス・タワーからは煙が立ちのぼり,私はハリウッド映画でも観てい…

ホテルニューグランドでの小田和正さんとの遭遇?

「ホテルニューグランド」で小田和正さんに遭遇! ↑↑↑格調高い内装の「ホテルニューグランド」本館ロビーです↑↑↑ 横浜の「ホテルニューグランド」は,1945(昭20)年8月30日に厚木飛行場に降り立ったマッカーサーが,GHQ本部を第一生命ビルに据えるまでの…

『東京奇譚集』を読む(その2)―ハナレイ・ベイ

「ハナレイ・ベイ」は,19歳の一人息子をハワイの海で亡くしたピアニスト,サチの物語です。 とりたてて感動的な物語の起伏を持っているというわけでもないのに,読んでいてなぜだか強く心ひかれるものを感じました。 いったいどうしてこうも強く心ひかれる…

『東京奇譚集』を読む(その1)―偶然の旅人

「旅は道連れ、世は情け」と僕は言う。 「旅は道連れ、世は情け」と彼女は確認するように繰りかえす。紙と鉛筆があったらちゃんと書きとめておくんだけどというような感じで。「ねえ、それってどういう意味なのかしら。簡単に言ってしまえば」 僕は考えてみ…

山田詠美の漫画『ヨコスカフリーキー』(山田双葉名義)

デビュー20周年を記念して『文藝』秋季号に特集が組まれている山田詠美は,じつは小説家になる前に漫画家だったことがあります。本名でもある「山田双葉」名義で公表された漫画のうち,単行本として発行されたものとしては,『シュガー・バー』(1981)と,…

「限りなく透明に近いブルー」って,どんな色?

これって,「限りなく透明に近いブルー」ってやつじゃない? 自宅近くを歩いていたら,見上げた空があまりに美しいので,ついついほれぼれと見とれてしまいました。あたりを見回すと,携帯電話を手にした人が何人か空を撮影していました。 「限りなく透明に…

「蹴りたい背中」論ノート――ちょっと真面目に考えました

「蹴りたい背中」の読みどころは,オリチャンに対するハツの同性愛的(?)感情だという気がします。 にな川に対するハツの執着にも,じつはオリチャンへの感情がからんでいるのではないかと思うのです。 そのあたりのことを改めて記事にしてみます。 「蹴り…

緑山スタジオの原爆ドーム―60回目の9月2日に…

昭和天皇が読み上げたいわゆる「終戦の詔勅」の日付は,8月14日であって8月15日ではありません。しかも,国際法上は,ミズーリ号船上で降伏文書に調印した9月2日を「終戦の日」とするのが妥当だと言います。 たとえば,韓国の光復節は8月15日ですが,ア…

「蹴りたい背中」と電話

土曜日、待ち合わせの場所の駅のホームで目に飛び込んできたのは、しゃがみこんでいる生気のないにな川と、すがるような目をして私を見た絹代だった。 「ハツ、来るの遅いよ! にな川が“このままじゃライヴに間に合わないかもしれない”って苛立ってて、すご…

【続報】正面衝突!あやうく死ぬところでした(>_<)

むごい!!!……あまりにむごすぎるぅ。。。 本日,修理工場の駐車場で愛しのクオリスとの再会を果たしました。 事故に遭って以来,およそ10日ぶりの再会です。 積みっぱなしになっていた荷物を下ろし,いよいよこれで今生のお別れになります。 事故直後に見…

正面衝突!あやうく死ぬところでした(>_<)

死ぬッ!と思いました。九死に一生でした。 トンネルの中をマイカーで走っていたら,スピードの出し過ぎでハンドル操作を誤った車がとつぜん目の前に飛び出してきました。瞬間的に「死ぬッ!」と思って全身の筋肉に緊張が走ったのとほぼ同時に正面衝突! 車…

「ノルウェイの森」の舞台(その3)―三島由紀夫とのニアミス

「ノルウェイの森」のワタナベが生活していた寮のモデルが和敬塾だとすると,近くに夏目漱石の「こころ」に出てくる雑司ヶ谷墓地があったことがわかります。Kの墓があり,漱石の墓がある雑司ヶ谷墓地です。ただしこの事実は,とりあえずは“面白い偶然”とい…

「ノルウェイの森」の舞台(その2)―雑司ヶ谷に眠る死者

僕は屋上の隅にある鉄の梯子を上って給水塔の上に出た。円筒形の給水タンクは昼のあいだにたっぷりと吸い込んだ熱でまだあたたかかった。狭い空間に腰を下ろし、手すりにもたれかかると、ほんの少しだけ欠けた白い月が目の前に浮かんでいた。右手には新宿の…

「ノルウェイの森」の舞台(その1)―死者たちの空間

8月16日の今日は,「お盆の送り火」の日です。13日に迎え火をたいて家に招き入れた祖先の霊を,ふたたびあの世に送り出すわけで,8月15日という日を中心として行われる盂蘭盆会(うらぼんえ=お盆)という行事の締めくくりの1日になります。大文字焼きと…

死者といかに向き合うか―戦後文学論序説

敗戦後60年目の8月に,ファン限定でアップしたものです。戦争を知らない世代の私が,戦争のことを考えるための唯一の基点とも言える体験を書きとめました。ブログ開設3周年を迎えるにあたり,限定をはずして公開します。(2008.2.10追記) 1 個人的な体験…