BUNGAKU@モダン日本_archives(旧・Yahoo!ブログ)

2005年2月18日〜2019年12月15日まで存在したYahoo!ブログのデータを移行しました。

教員の働き方改革/生徒の学び方改革(あと101日)

平成が終わるというので昔のことを思い出していると,ついつい昭和までさかのぼってしまうので,今日はバッチリ平成の話を。

高橋まつりさんの悲劇から学ぶ

1年近く前のことです。

電通過労自殺」と伝えられた事件をめぐる問題について,お母様の高橋幸美さんと,弁護士・川人博さんのお話を聞く機会に恵まれました。

講演は基本的に「労働」「労働者」についてのお話だったのですが,私にはすべてが「学習」「学習者」の話のように聞こえました。

きわめてブラックな教員の働き方を改革することも大事だけれど,そもそも生徒の学び方がブラックであることを同時にフレームアップしないと,あまりにもアンフェアではないかと思うのです。

どういうことでしょうか?


以下,「健康に働くこととワークルール」というテーマで川人弁護士が語った「労働」「労働者」の問題を,「学習」「学習者」の問題に置き換えてリライトしてみます。

書き換える前の,「労働」と「労働者」の話がどのようなものであるのかを推測しながら読んでみてください。

スタディー・ライフ・バランス
学習と生活の調和をはかること。
学習以外の生活の時間がとれない状況では,しあわせな人生を送ることができません。
長時間学習が続く毎日
家族団らんの時間がとれない。
親子が一緒に食事できない。
趣味の時間がとれない。
世の中のことを考える時間がない。

◉学びのルールについて
教育者(学校)と学習者(児童・生徒)は力関係が対等ではありません。
そこで,立場の弱い学習者をサポートするために、ワークルール(学習法規)が必要です。(学習基準法,学習契約法など)

▼健康に学ぶための学習ルールQ&A
Q:教育者から1日10時間学習するように指示されました。これに従う義務がありますか?
A:学習基準法では,1日8時間(授業6時間・課外活動2時間),1週間40時間以内の学習に抑えるように決められています。したがって,10時間も学習する義務はありません。
Q:「今月は行事や公式戦が多いから月に3日しか休みはない」と先生から言われました。休日の権利について教えて下さい。
A:法律で最低週1回,休日をとる権利がありますので,月3回の休日は,法律違反です。(特別の約束[36協定]がある場合だけ、例外的に休日が少なくなります。)
Q:有給休暇とは,どのような休暇のことですか?
A:有給休暇とは,半年以上通学すると最低年間10日間以上の休日を自由にとる権利です。休暇の目的は,何でも構いません。(もちろん,賃金未払いは法律違反です。)
Q:高校生として学習してきましたが,宿題や課外活動が多く辛いので退学したいと担任に話したら,そんなことは認められないと突っぱねられました。すぐ退学できないのでしょうか?
A:学習者は,理由を問わず,いつでも退学する自由があります。
Q:試験を受けて入学した後,高校生として学習していたのですが,定期試験が赤点ばかりでひどいので退学処分にすると言われました。納得がいきません。
A:教育者(学校)は,合理的な理由がなければ,学習者を一方的に退学させることはできません。単に成績が悪いというだけでは,合理的な理由とは言えません。学習者には退学する自由がありますが,教育者には退学させる自由はありません。
Q:学習者で組織する児童会や生徒会にはどのような権利がありますか?
A:団結権,団体交渉権,団体行動権ストライキ権など)があります。
こんなふうに書き出していくと,学習者の人権がいかにないがしろにされてきたか,という問題がフレームアップされてきます。

ついこのあいだまで(?)体罰は合法的でしたし,今でもパワハラは合法です。

「おい,宿題を忘れるって,どういうことなんだ? そんなことやってるからこのあいだの模試で偏差値が下がっちゃったんじゃないの? ん? どうなんだ? おいこら! なんとか言え!!!」みたいな・・・こと,今のご時世,オフィスでやったらパワハラですよねぇ^^;

そして,学校教育を受ける中で,ブラックな学校社会のルールに適応的な行動が強化された人材が育てられていくと,10時間労働をいとわない「真面目な社員」が大量に生み出されるのではないか,という思いが,川人弁護士の話を聞きながら私の胸中に渦巻いていました。

学校教育において「優等生」だった高橋まつりさんは,まさにそういう「人材」として育てられてしまったのかもしれません。

学校という場で,「労働」と「労働者」について語っていた川人弁護士の胸中に,上記のようなアナロジーがあったかどうかを確かめられませんでしたが,おそらく高校生たちの心の中には,そういう思いが兆したに違いありません。

「金曜日の午後に『月曜日までにやっておいて』という職務上の依頼をすることがありますが,これはそもそも時間外労働を前提にしないとできない依頼で,法律違反です。」という話を川人弁護士がしていましたが,これを聞いた高校生は「金曜日の午後に来週の月曜日提出の宿題を出すのは,法律違反にならないのか?」と思ったに違いないのです。

・・・という話を受け,明日は恐ろしくブラックな学校を紹介します。